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『論語』の旅をたどる〈1〉 | 徒然忘備録

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『論語』の旅をたどる〈1〉
 
  <続き>に掲載した記事

 中国とインドの違い
日本になぜ、武士道が広がらなかったのか
朝青龍の問題

なかなかウイットに富んだ内容です

宴会のお酒のサカナに使える内容♪
だから、防備録として保存


 
明治の男に学ぶ中国古典

ドラッカーに影響を与えた『論語』は“お笑いのネタ”?
渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈1〉
守屋 淳 【プロフィール】
キーワード論語と算盤 渋沢栄一 孔子 中国 インド 商人 モンゴル 万里の長城 朝
青龍 武士


まず、本題に入る前に『論語』に関する基礎知識を、簡単に触れておきましょう。

1:『論語』の著者は?

これは、ついつい孔子と答えたくなりますが、実は孔子は成立自体にはまったく
かかわっていません。彼の孫弟子や曾孫弟子たちが、教えが散逸しないようにと集
まって編んだのがこの『論語』だといわれています。『論語』の意味も、「論」は
「編集する」、「語」は「孔子の語ったこと」で、あわせて「孔子の語ったことを
編集しました」との説が有力です。

2:孔子ってどんな人?

孔子は、本名を孔丘といいます。子というのは「先生」の意味。前552年、あまり
裕福でない下級貴族の家に生まれました。早くに父を亡くしたこともあり、今で言
えばアルバイトをしながら苦学の末に学問を身につけ、やがて自分で起した就職予
備校の講師をしつつ、自分も政治家や官僚をめざす生活を続けました。

50を過ぎてから、ようやく母国での仕官が決まり、それなりに活躍しますが、政
争に敗れて国を出る羽目になります。以後、足掛け13年間諸国を放浪。「わたしの
政策を取り入れてもらえませんか」と売り込んでまわるのですが、うまくいかずに
母国にもどります。晩年は、弟子の指導や学術文献の整理を行ったようです。前479
年没。

さて、ではこんな背景を持つ『論語』は、どんな特徴を備えているのかといいま
すと、これは、『論語』の教えが地理的、身分的にどこまで通用し、逆に通用しな
くなったのか、という『論語』の“限界”を追っていくと、きれいに浮かび上がって
きます。


「万里の長城」という地理的限界

まずは地理的な通用範囲についてですが、これは案外狭くて、以下のようになります。

北: 万里の長城の内側まで
西: 現在の新疆ウイグル自治区、チベット自治区の手前まで
南: ベトナムなどインドシナ半島北部まで
東: 朝鮮半島と日本、台湾

現代において、ここにつけ加えるなら、シンガポールや各地のチャイナタウンも
入るでしょう。とはいえ、言い換えればこの程度しか『論語』や儒教の教えは広ま
りませんでした。これはキリスト教や仏教に比べれば、かなり狭い範囲でしかあり
ません。では、なぜこれ以上外には広がらなかったのか。この答は、「万里の長
城」という地理的な区切りを考えると、見えてきます。

万里の長城の外側は、言わずと知れた遊牧民の世界。そして、彼らの社会は基本
的に「実力制」でした。

遊牧民族たちは、ステップや砂漠地帯といった、とても過酷な自然条件に暮らし
ていました。しかも生活の手段は狩猟や牧畜でしたから、実力のないものが一族や
組織を率いてしまうと、糧が得られなくなり、最悪の場合は、全滅するリスクを抱
えていたのです。このような状況では、経験はもちろん必要ですが、それ以上にリ
スク管理や正しい決断のできる実力が指導者に求められました。

無理矢理、現代にひきつけてしまえば、米国のCEOがその高給の代償に、過酷な競
争のなかでの企業業績の責任を負う――そんな図式に近い状況がここにはありまし
た。


では、これに対する『論語』や儒教の教えは何か。対比としては「年功序列
制」なのです。「孝(親を大切にする)」や「悌(目上を大切にする)」といった
徳目を目にされたことがあると思いますが、これは彼らの暮らす環境が温暖な農耕
文化圏であることにかかわってきます。

一般に農業の場合、長年の経験が大きな力になりやすい面があります。テレビド
ラマや時代劇などで、農村の長老が天候の変化などから「飢饉が来る」「洪水が来
る」といった予言をして、みなが怯えるといったシーンがありますが、まさしく経
験が尊重されやすい文化を象徴するシーンといえるでしょう。

つまり、農業は毎年同じことを繰り返す面があるため、経験が武器になりやす
く、「年配者」「年上」が尊敬の対象になりやすいのです。だからこそ、環境の同
じ温暖な農耕文化圏では、こうした傾向をそのまま教えに織り込んだ『論語』や儒
教が受け入れられていくのです。ベトナム、朝鮮半島、日本はこのよい例でしょ
う。

現代でも、とある日本の若い社長さんが、「自分みたいに若い人間が、業界の集
まりとかに行っても、全然相手にしてもらえないんですよ。なんでお前みたいな若
造が出てきているの、みたいな顔されちゃって」と嘆いているのを耳にしたことが
あります。これはまさしく「経験者エライ」「年配者エライ」といった風潮がいま
だに根強く残っている象徴でしょう。一方で、まるで状況の違う遊牧文化圏ではケ
ンもホロロ。「経験が長いというだけでは、俺たちの環境では生き残れないんだ
よ」とばかり、なかなか浸透していかないのです。

実はこの農業文化圏と遊牧文化圏の違い、昨今の日本で話題になった事件と
ちょっと関連してくるので、余談ですが触れておきましょう。それが朝青龍問題な
のです。


朝青龍問題と『論語』受容の関係

温暖な農業文化圏では――特に日本ではと言うべきかもしれませんが――その作業の
特性によって、ある価値観が生まれてきます。それが、

「みなと同じに振舞うこと」

この点で、中央アジア史の専門家である宮脇淳子氏に、次のような指摘があります。

《田植えの季節には、村中の人たちが一緒になって川に近い田んぼからみんなで
田植えをしていった、協調こそが日本人が生きていく上での美徳となったのは、そ
のためだろう。農村で稲作をして暮らす日本人にとって一番こわいのは、仲間はず
れになることだった》

《若い子たちが「KY(空気読めない)」と言われて仲間はずれにされることをひ
どく恐れるのは、このような伝統のせいだろうか》(『正論』2008.8「誰も語らな
かったモンゴルの凄さ」)

一方で、遊牧文化圏では、

「みなと違うことをする」
という真逆の価値観が尊重される、というのです。

《たくさんの家畜に十分に草を食べさせるためには、別の人間がすでに放牧した
ところには行ってはいけない。つまり、モンゴルの遊牧生活では、他人とはつねに
違うことをしなければいきていけなかった》(同上)

そう、朝青龍はこの意味で、遊牧文化圏的な「実力あるものが一番エライ」「み
なと違うことをする」という意識を色濃く持っていた横綱でした。だからこそ、モ
ンゴルでは人気があっても、日本の「みなと同じに振舞え」「目上を敬え」という
文化には馴染まなかった面があるのです。一方の白鳳は日本人的な横綱といわ
れ、日本人には人気がありますが、モンゴルではそれほど人気がないという話に繋
がってきます。


冒頭で、孔子はお笑いのネタ扱いされているという話を取り上げましたが、以上
の意味からは、東アジアとは文化風土の違う欧米において、『論語』が儒教や重ん
じられていないというのも、至極当然の話になってくるわけです。

さて、ここまで地理的な限界について見てきましたが、実はもうひとつ、違った
切り口からの限界があります。それが、いわば「身分、職業」による限界。この点
に関しては、中国とインド、それぞれの古代の学術の特徴を見ていくと、面白い知
見が浮かび上がってきます。このアジアの二大国、実は古代の学術分野に関して
は、得意分野が真逆という特徴があるのです。

中国=実学(社会をいかに良くしていくかという学問)、歴史
インド=宗教哲学(ニーチェなどに影響)、数学(特に代数学が近現代の数学に
大きな影響)

奇しくもこの二カ国は、相手の得意ジャンルはさっぱりダメという対照的な面を
持っていて、中国では高度な宗教哲学や数学はほとんど発展しませんでした。一方
インドでは、紀元前にインドをほぼ統一したアショカ王の生没年すら、はっきりわ
かっていないほど(説によっては100年くらいの開きがある)歴史に興味がなかった
りするのです。

なぜ、こうなってしまうのか、これはそれぞれの学術を担った階級の差を反映し
ているからなのです。

まず中国の学術を担ったのは、士大夫と呼ばれる貴族たちでした。これは現代で
いえば、「政治家、官僚」に当たります。現代にひきつけて考えてみても、たとえ
ば政治家や官僚が学術書をあらわし、文化を担っていくとしたら、それはおそらく
「いかに今の日本を良くするのか」という「実学」が主柱となっていくことでしょ
う。彼らの問題意識がそこにあるからです。

さらに、社会的な事象を考える上で、必ず参照されるのが過去の歴史でもありま
す。今回の金融危機の際、1920〜30年代の大恐慌の教訓を参考にしようという盛り
上がりがあったのは、この典型例でもあります。

一方、インドの学術を担ったのは、バラモンと呼ばれる宗教家たちでした。彼ら
は神の世界を相手にしているがゆえに、高尚な宗教哲学や、神の完全性の反映とも
いえる数学には力をいれますが、現世を扱った歴史にはあまり興味を示さなかった
と考えられるのです。


「すべての商業は罪悪だ」という三百年にわたる風潮

つまり、「政治家、官僚」が、自分たちの問題意識を前面に押し出してつくった
のが、中国古代の学術、そして『論語』や儒教の教えでした。すると、どのような
限界が生まれるのか。この点は、渋沢栄一の『論語と算盤』に面白い指摘があるの
で、その一文をご紹介したいと思います(筆者の現代語訳版からです)。

《武士道に関して、わたしがとても残念に思うことがある。それは武士道が日本
の代表的な長所だったにもかかわらず、古来もっぱら武家社会だけで行われ、経済
活動に従事する商工業者の間では、重んじられなかったことである。

昔の商工業者たちは、武士道をひどく誤解していて、「正義」「廉直」「義
侠」「敢為」「礼譲」などを大事にしていては、商売は立ち行かないと考えてい
た。

「武士は喰わねど高楊枝」
というような気風は、商工業者にとってはあってはならないものでしかなかった》


《武士たちは、人を治める側はあくまで消費者なので、生産には従事しない
し、人を治め、教え導く者が経済活動を行うのは、その本来の役割に反することだ
と考えた。

「武士は喰わねど高楊枝」
という風潮はここを土台に続いていったのだ。さらに、

「人を治める者は人々から養われる存在」
と武士たちは信じ、ここから

「人に食べさせてもらうからには、その人のために命を投げ出す」
「人の楽しみをみずからの楽しみにする者は、人の憂いをみずからの憂いにす
る」
といった行動が、彼らの果たすべき義務だと考えてもいた。

結局、経済活動は、社会正義のための道徳と無関係な人が携わるとされたた
め、まるで「すべての商業は罪悪だ」と言われた大昔と同じような状態が続いてし
まったのだ。これが三百年にわたる風潮を作り出していった》

特に江戸時代、商人たちが武士道のような道徳をあまり重視しなかったことを嘆
いた文脈からの引用です。この栄一が嘆いて止まない商売道徳の問題には、もとも
との『論語』の教えがかかわっているのです。ただし、江戸時代には「三方よ
し」の精神で知られる近江商人や、商業道徳を高らしめた石門心学などもあり、栄
一の指摘通りとはいえない面があります。商売道徳高揚のために、栄一はやや誇張
した議論をしている、と考えるべき部分であることは注意すべきでしょう。


『論語』を身の丈に合わせていった日本人

話をもどしますと、もともと『論語』も「政治家、官僚」を対象とした教えにな
るわけですが、「政治家、官僚」の特徴というのは、

「ひたすら公益だけをめざしていても、給料はもらえる立場」

さらに、これを良い方向に推し進めれば、

「税金で給料をもらう以上、ひたすら公益を追い求め、私利私欲を捨て去るべき
立場」

となるのです。逆に、

「税金で給料をもらっているのに、私利私欲ばかり追い求めてしまう」

という政治家や官僚では困りもの。実際、そうした疑いをかけられた人々が、現
代でもマスコミから袋叩きにもあっているわけです。

この意味では、「武士は喰わねど高楊枝」はまさしく『論語』的な正しい態度で
あり、それを商人たちが受け入れられないのも当たり前、という面があるので
す。なにせ商人は、自分の利益は自分で稼がなければならない立場、ひたすら公益
をめざしていても、税金から給料がもらえるわけではないのです。

しかし、日本では、こうした限界を乗り越え、『論語』を身の丈に合わせた形で
の享受や活用が行われていきます。まさしく戦後のものづくりにおいて、創造や発
明よりも、改善や改良に強いと言われ続けた日本のひな型がここにあるような話で
すが、その嚆矢となったのが、江戸時代における儒教受容の形でした。

(次回につづく)

注: この稿のなかで「実学」という用語を使いました。これはもともと、医学や工
学、商学などの学問、また、江戸時代でいえば蘭学などを指していて、この使い方
では中国古典の教えとは別物を指すことになります。ただし渋沢栄一が『論語と算
盤』のなかで、中国古典の教えを「実学」だと述べているように、広義に「現実に
役立つ学問」の意味でも昔から使われているので、ここではこの意味で「実学」と
いう用語を使っています。

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